02.15
Wednesday
2012

前回紹介した金箔・銀箔風テクスチャを使って、作品を製作してみました。大垣市共催コンテストDigital Artist Contest 2012投稿作品です。題名はいろいろ悩んだのですが、「晩春銀彩」としました。松尾芭蕉の『奥の細道』に登場した俳句から一句選び、その俳句からイメージする画像を作成するというもので、私は「行く春や 鳥啼 魚の目は泪」を選択しました。


「晩春銀彩」

実は、今回のコンテストもパスするつもりでした。けれど、sannziさんが投稿作品を制作しているというBlog記事を読み、この時点での投稿作品が少なかったこともあって、私も投稿してみようと製作を思い立ちました。最初は「雲の峰いくつ崩れて月の山」を選択し、Vueでの製作を考えていました。この月山が以前製作したことのある月読の命と縁があるとの記事を目にしたことがきっかけです。時間がかかりそうなので断念したのですが、sannziさんがこの俳句を選択して、作品を制作されたのには、少し驚きました(^^;

以下、投稿作品につけた説明です。
1)作品にした松尾芭蕉の句
 行く春や 鳥啼 魚の目は泪

2)1)に関して表現したかった内容について
 行く春、鳥、魚−これらの要素を一枚の画像に収めるために、水中から空を見上げた世界を描いてみました。日本画風に仕上げるために銀箔風のテクスチャを背景に用い、空の風景は図案で描きました。行く春として水面をながれる桜、その下を泳ぐ魚と手前に配置したものがより写実的になるようにしています。

3)注目して欲しい点や苦労・工夫した点
・銀箔風テクスチャの処理に苦労しました。光源の位置にレイヤーで太陽(もしくは月)をブレンドしたのですが銀色の雰囲気が簡単に壊れてしまうので、色の調整が大変でした。
・桜の色彩も銀色の背景に少なからず影響するので、何度か色を調整しています。
・奥行きが感じられるよう、手前に配置したものをより写実的にすると共に色彩には気を使いました。
・背景、桜、魚に光源を意識した処理を施しています。

クレジット:水中生物の森(e-frontier)、サクラ吹雪セット(sannziさん)、Rons Birds(DAZ)、銀箔風テクスチャは自作
使用したソフト、Gimp、Vue9 complete、shade 11

この作品では、前回の作品で上手く表現できなかった銀色の表現を中心に据えました。上記解説にも記載したのですが、銀箔の処理には大変苦労しました。光沢がある部分に太陽(実はVueで描いた月だったりする)が重なるようにしたのですが、製作していくうちに銀色が少しずつ変化していき、次の日見直してみると”あれ?…銀色に見えない”ということの繰り返しでした。前回金色知覚のことを記載したのですが、銀色の知覚はもっと領域が狭いように感じました。

桜の色彩は背景を単色にするとこんな感じです。見てもらえばわかるのですが、光沢が感じられるようグラデーションをかけています。この色彩にも苦労したのですが、ここまでしないと銀色が上手く表現できないように思いました。最後のほうは、”色彩の感覚が変かも??”というような状態だったのですが、それでも銀色だと感じられるよう調整した作品を投稿しました。銀色というのは色彩のトリックアートなのかもしれません。


桜のみの画像(↑サムネイル)

ちなみに、銀というのは大変化学変化を起こしやすい物質だそうです。Wikipediaによると、銀が古くから支配階級や富裕階級に食器材料として用いられてきた理由の一つは、硫黄化合物や砒素化合物などの毒を混入された場合に、化学変化による変色でいち早く異変を察知できる性質からという説があるそうです。

銀箔を効果的に使った作品としては、尾形光琳製作の「紅白梅図屏風」しか私は知らないのですが、銀箔を使った代表作が少ないのも劣化のしやすさが影響しているのかもしれません。Wikipediaで銀箔を調べてみると、この化学変化しやすい性質を逆手に取って、銀箔に特殊処理を施すことで様々な色彩を持たせたものも存在するとのことです。光陽箔や玉虫箔、赤貝箔、虹彩箔などがあるのですが、玉虫箔や虹彩箔は名前からすると光線によって色が変わる箔だろうなと思いました。一方で黒く変色させた黒箔というのもあるそうです。こんな箔を実際に画材として上手く使えたら面白いだろうなと感じました。

今日のつぶやき
和風展に際して、日本画風の作品の製作を考えています。Wikipediaによると(今回はWikipediaネタが多いな)、写実を追わない、陰影がないなどの特徴があるようです。個人的には間の取り方(空間の使い方)が上手いなと感じています。3Dでの作品制作をしていると、必要以上に背景を埋めてしまうことが多いので、作品制作を通じてそれを見直すきっかけになればいいなと考えています。


02.02
Thursday
2012

NHKで放送されていた「伊藤若冲」の特集をみました。個人的に特に興味を惹かれたのが、「色と光の魔術師」という皇室の明宝「動植綵絵」の色彩についての特集でした。鳳凰が描かれた「老松白鳳図」は金色に着色されているのですが、金を含む金泥は使用されていないことが今回判ったとのことです。金色というのは、単色ではなく色彩とコントラストが一定の条件を満たすことで金色と認識されること(金色知覚)が紹介されていました。若冲は金を使わず、色彩をコントロールすることで金色を表現しているとのことです。

丁度、F3Dのお題が「金と銀」だったこともあり、TVで紹介されていた金色知覚の情報を参考に金色を作成してみることとしました。金色の製作はPoserでのマテリアル設定ではなく、レンダリングした画像をGimpのレイヤーブレンドを用いることとしました。背景の空もブラシを用いて手書きし、それを黄金色の空にしています。


「黄金色の空と白孔雀」(↑サムネイル)

「老松白鳳図」で描かれていた鳳凰が孔雀に似ていたこともあって、白孔雀を題材に選びました。今回、ネットで画像検索していて白孔雀を見つけたのですが、とても綺麗で興味を惹かれました。DAZで販売されているPeacockをPoserでマテリアル調整して白孔雀を製作したのですが、これだけではかなり違和感がありました。このため、レンダリング画像にデジタルペイントを行って、白孔雀を完成させました。いつもながら、白い動物というのはマテリアル調整だけではなかなかいい感じに仕上がらないものですね。

F3Dの投稿期間は終わってしまったのだが、和風展でも使えるかなと思って金と銀のテクスチャを自作しました。金箔風にしたいと考えていたこともあり、テクスチャには細かい凹凸をつけています。この金箔風テクスチャを調整して、銀のテクスチャも製作しました。個人的には銀のテクスチャのほうが好みです。金色に限らず金属質のテクスチャには光沢が必要なのですが、光沢が書き込まれた画像データは、画像を並べて使用したい時などには使い難いということがあります。テクスチャはほぼ完成したのですが、配布はどうしようかなと考えています。


製作中の金のテクスチャ(↑サムネイル:拡大してもそれなりに綺麗)


製作中の銀のテクスチャ(↑サムネイル:拡大してもそれなりに綺麗)

今日のつぶやき
(1)お知らせ:その1
今年も和風展が開催されます。投稿期間は3月1日(木)0:00〜3月11日(日)23:59となっています。この作品にかまけていて、全く準備ができていないのですが、今年も参加したいなと考えています。しかし、いつもながら、この時期になるとPCの調子が悪くなるのはなぜなんだろう……

(2)お知らせ:その2
プリザーブドフラワーのデザイナー浅見さんが、以前私が製作した作品「夜桜と黒馬」を題材に作品を制作されます。製作されたプリザーブドフラワー作品は東京上野の上野の森美術館で2月23日−26日「日本の美術」に出展されます(入場無料)。自分の製作した作品がこんな風にネットの世界から現実の世界に出て行くというのは、とても不思議な感じですね。東京・横浜観光も兼ねて、私も見に行きたいなと考えています。データ印刷の件ではHONEYさんにいろいろと教えていただきました。お礼申し上げます。


「夜桜と黒馬」(↑サムネイル)

簡単ですが、お知らせでした。本日は大阪でも雪が舞っているのを見かけました。寒い日が続きますが、皆さんも体調にはお気をつけください。